Human Vision & Color Science Lab.

立命館大学 情報理工学部 知能情報学科 ヒューマンビジョン研究室/立命館大学大学院 情報理工学研究科 情報理工学専攻 人間情報科学コース

研究紹介

ベクション(視覚誘導性自己運動知覚)

最近話題の3Dテレビ,高解像度ハイビジョンは当たり前,色鮮やかなディスプレイも増えました.良いことばかり?実は映像を見て目が疲れたり,気分が悪くなるケースが増えています.例えば座ったまま動く映像を見た場合,視覚系は「自分は前に進んでいる」と判断し,一方で内耳にある前庭器官は「静止」と主張し両者が矛盾します.映像コンテンツの規制も良いけれど,何とか賢い方法で解決できないかと研究しています.実験ではベクション(視覚誘導性自己運動知覚)の主観測定や身体の重心動揺計測を行なっています.

デモ動画(mov形式)

ベクション(視覚誘導性自己運動知覚)

新しい明るさ感の単位

白い壁と黒い壁の部屋を比べると「照度」が等しくても,黒い壁の部屋の方が暗く感じます.つまり照度は人間の感じる明るさに完全には対応しないのです.そこで私たちは「色モード境界輝度」という人間の認識に基づく量で空間の明るさを表すことを提案しています.この研究では,室の明るさ感の決定要因を調べるとともに,実際の照明設計において有効な明るさ尺度の確立を目指しています.昨年からFeu(フー)という単位で,Panasonicの”SmartArchi”シリーズに採用されています.

新しい明るさ感の単位

高齢者社会と視覚研究

日本の高齢者は1900万人を越え,もはや少数派ではありません.活力ある社会を継続して行くには,高齢者の多方面での積極的な活動が欠かせません.そのためには,社会の側が高齢者に快適な機器と環境を提供する必要があります.加齢効果が最も顕著なのは視覚機能です.研究室でも高齢者の視覚特性を研究しています.成果の一部として「高齢者用の照明システム」が商品化され,百貨店に導入されており、グッドデザイン賞も獲得しています.

高齢者社会と視覚研究

カラーバリアフリー

日本男性の20人にひとりは色覚に何らかの障害を持つと言われています.そのような人たちにとって見えにくい色使いが街中にあふれています.誰にとっても見やすい色彩を.これがカラーバリアフリーの考えです.それを実現するには人間の色覚メカニズムを知る必要があります.研究室でもこの問題に取り組み,2色型色覚者のシミュレーターを開発しました.さらに企業との共同研究により「UDカラー」というソフトウェアも商品化され多くの企業や団体で使われています.Ritsのトップページ下,サイトポリシーから.

カラーバリアフリー

新しいカラーマネジメント

モニタ上の色とプリンターで印刷した色が同じにならず困った経験はないですか.カメラ,スキャナー,モニター,プリンターなど様々なメディアで同じ色を再現すること.それは機器メーカーや印刷業界の大きな課題です.同じ色にならないのは物理的に色再現範囲が異なるから?それだけではありません,色覚メカニズムが大きく関与しています.視覚系では状況に合わせて自動的に色補正機能(色順応)が働きます.この点を考慮しないと本当のカラーマネージメントはできません.逆にこのことを利用すれば,物理的に異なる分光組成でも同じ色に見せることが可能です.ここでは色覚メカニズムに基づく新しいカラーマネージメント手法の確立を目指しています.

新しいカラーマネジメント

目撃証言と視覚

刑事裁判においては目撃証言が重要な判断材料に.しかし証言は信頼できるのか.視環境と視覚特性の専門家として司法に協力します.立命館大学R-GIROのプロジェクトに参画し法学や心理学の専門家とも共同研究を進めています.

目撃証言と視覚

デジタルカメラによる色彩計測

視環境評価のために空間内の輝度・色彩分布を計測したい.通常の色彩輝度計は一点一点の測定なので分布を測るのは大変.輝度・色度分布測定器は高額.安価で汎用的なデジタルカメラで色彩分布計測ができないか.さらに,プロジェクタを用いて物体表面に様々な光を照射することで,分光反射率を推定する手法も開発しています.

デジタルカメラによる色彩計測

安らぎ空間の創出

最近では窓のない部屋が増えています.居住性は良くありません.なぜ?本来なら窓を通して得られる外の情報が得られないから.そこで壁にコミュニケーションウィンドウ(CWL)を付けます.外の明るさが障子の後ろの照明光によって与えられ,さらにその照明光は外の明るさを再現するようにセンサーとコンピューターによって制御されます.外界情報が上手く伝わるか?閉空間に安らぎを!それがこの研究です.実際に研究室内にCWLを備えたモデルルームをつくり実験をしています.さらにLEDパネルに発展させ壁掛けCWLを好きな場所に.

安らぎ空間の創出

眼は口ほどにモノを言う

人間は1秒間に約3回,眼を動かしながら外界情報を取込んでいます.眼は視覚系の窓.眼の動きから視覚情報処理が分ります.私達は眼球運動の測定を通して,より実際的な場面での視覚情報処理について研究しています.被験者は眼球運動測定用センサーのついたゴーグルをつけ,何らかの作業,例えば自動車の運転を実際に行います.条件や課題が変わると眼の動きも変わります.そこから色々なことが分ります.「注意」がどこに向いているのか,「有効視野」の大きさは,どの様な情報が「保持」されているのかなど.眼の動きはとても敏感ですから,通常の知覚実験では分らないことも調べることができます.新しいマンマシンインターフェースとしても期待されています.

眼は口ほどにモノを言う